ゆうま「ペニ日記」

韻を踏むペニスによるLove & Penisと性教育。

ゆうまくんさ、RAPは上手いんだけど面白くないんだよね

「ゆうまくんさ、RAPは上手いんだけど面白くないんだよね」

 

 

忘れもしない、13年前、2007年5月。
僕のRAPの師匠に言われた一言である。

 


これは、13年前、2007年5月、僕が大学1年生の頃の話だ。

 


僕は早稲田大学ソウルミュージック研究会、
GALAXYに入部した。


ライムスターやKEN THE 390氏等、大物を輩出したサークルである。


新入生である大学1年生は全員、先輩の指導の下、
曲を1曲作って2ヶ月間RAPとライブの練習をし

夏にたった1曲だが初ライブをする。

 

この練習かなかなか体育会系でスパルタなのだが、

大学の外の、人通りが多い中で、

マイク代わりにペットボトルを片手に持ち、

でかいスピーカーから大音量でトラックを流し、

ライブ本番を想定して練習するというものだ。

 

新入生は先輩たち十数名から、

声が小さいとか、客を意識できてないとか、

フックの盛り上がりが弱いとか、

どこ見て歌ったんだ、とかトークが下手とか

みんなの前でとにかく厳しい「指導」を受ける。

 


そのときに、僕の教育担当、

つまり僕の師匠になったのが、宙チート氏(現在はLIL辰徳氏というお名前でご活躍されている)だった。


宙チート氏といえば、

当時のDragon One君やMILES WORD氏らと

クルーを組んでおり、池袋bedや新宿MARZなどで

めちゃめちゃライブをやっており、

 


当時の僕の記憶でいえば

めちゃめちゃイカツイひとだった(ただし、この後にも描くようにとても優しい方である)。

 


当然サークルのなかでもいちばんイカツくて、
4XLぐらいのオーバーサイズの黄緑のTシャツに、
ダボダボのジーンズを引きずり、ティンバーランドの似合うような方だった。

 


逆に僕は、新入生のなかでいちばんイカツくない、

それどころか、ひ弱な見た目の大学1年生のゆうまちゃんだった。

 


そんな僕の教育担当が宙チートさんになってしまったのだから、当然びびった。


めちゃくちゃ怒鳴られるんだろうな、とか、

キレられるんだろうな、と思っていた。

 


ところが実際は逆で、宙チートさんはとても優しかった!!!

 


他の新入生の教育担当である先輩方は、
週1度の練習に来たり来なかったりすることもあった。

 

だが、宙チートさんだけは「絶対に」毎週練習に来てくれて、アドバイスをくれた。


アドバイスをするときはキレるどころか

いたって冷静で、僕の目を優しく見つめながら

おだやかに話してくれて、僕を励ましてくれた。


練習後の飲み会のときに、

僕が酔ってイキって調子に乗って、

宙チートさんにお酒をイッキさせようとしたときも、ブチ切れるどころか、微笑んでいた。


一ヶ月後。

練習が何度か続いて、少しずつ慣れてきた日のこと。

 

宙チートさんが、練習の途中で

「ゆうまくん、トイレ行こうぜ」

と言った。

 


なぜかトイレに行く道、宙チートさんは無言で、
何も話さず、僕の顔を見ようともしなかった。

 


そして、トイレに着き、僕たちは小便器に並んで
オシッコをはじめた。

 


オシッコを半分ぐらいしたところで、宙チートさんはようやく口を開いた。

 

 


「ゆうまくんさ、RAPは上手いんだけど面白くないんだよね」

 

 


RAPは上手いんだけど、面白くない???

 


僕はこの言葉を聞いた時、最初は思わず喜んでしまった。

 


現場でガンガン活躍されている宙チートさんが、
僕なんかに「RAP上手い」と言ってくれた。

 


でも次の瞬間、我にかえった。

 


宙チートさんが僕に言いたいのは、
「RAPが上手い」という褒め言葉ではない。

 


宙チートさんが言いたいのは、
「ゆうまのライブはつまらない」ということだ。

 


僕は宙チートさんに「どうしたらいいですか?」と聞いたが、宙チートさんから具体的な回答はなく、もっと色々見たりして研究するように、という宿題を出された。

 

 


それから1週間。
どうやったら自分のライブが面白くなるか、
ひたすら考え続けた。

 

 


歌い方に変更を加えたり、
トラックのBPMを変えてみたり、
トークの内容をより具体的にしてみたりと
自分なりに工夫してみた。

 

 


その結果以前よりもイロモノっぽくなってしまったが、なんとなく、「こっちの方がしっくりくるなあ」という状態になった。

 

 


1週間後の練習の日。
僕は気分が重たかった。

練習に行くのがこわかった。

 


自分なりには努力したつもりだが、

なんとなく「そういうことじゃない」と言われるような気がしたからだ。

 


そして、練習の日。
宙チートさんや先輩たちの見ている前で、
僕は、変更したやり方で、歌った。

 


すると、驚くことに、宙チートさんではなく

他の先輩たちから「以前よりよくなった」という

声があがった。

 


宙チートさんはみんなの前では何も言わなかった。

 


練習の後、僕は恐る恐る宙チートさんに、
「どうでしたか?この部分をこうやって変更してみたんですが...」と聞いた。

 


すると、宙チートさんは、いつもの優しい表情で、「よかったよ」と言い、微笑んだ。

 


それから1ヶ月後、2007年7月1日。新宿イズムにて。


僕は人生初の、そして人生最後の
初ライブを迎えた。

 


ビギナーズラックもあるけど、その日はとても良いライブができたと思う。

(もちろん今見たら目も当てられないほど下手くそだと思うんだけど)


こうして宙チートさんに稽古をつけてもらった結果、僕の人生初の初ライブは幕を閉じた。

 


ちなみにこれはGALAXYのルールというか、

毎年恒例のことなのだが、新入生は7月の初ライブが

終わると、それ以降、GALAXY内での活動はほぼなくなる。

 

次は来年に自分たちが2年生になったときに、

後輩を指導する側に回るのだが、

それまでサークル内での活動はぼぼなくなるのだ。


だから、それ以降一切ライブをしなくなる人も結構多い。


これは僕なりの解釈だが、


「ここまで指導したんだから、後は自分たちでやれ」


ということだと思う。


言い換えれば、GALAXY内の身内ノリで終わらず、
ライブがしたければ自分で現場に行ってチャンスをつかめ、ということだと思う。

 


初ライブ後は宙チートさんと毎週会うこともなくなったし、宙チートさんが僕にアドバイスをくれたり、ライブのチャンスをくれるようなことも一切なかった。

 


あれから13年、2020年現在。


初ライブに向け練習したあの日から13年が経ったが、僕はRAPをしていて宙チートさんの教えを忘れた日はない。

 


僕はRAPをやるとき、曲を作るとき、ライブをするとき、バトルをするとき、常に「面白いかどうか」を大切にしてる。

 


宙チートさんと会うことはほとんどなくなったが、
これは、師匠から受けた最大の教えだ。

 


格好良さもRAPの上手さも大切かもしれない。
でも、面白くなければ意味がない。

 


現場でたくさんのライブを見てきたが、
たった10分のライブでさえ、格好良くても、上手くても、「飽きずに面白くみられるライブ」は滅多にないと思う。


また、MCバトルのときは面白いのに、
ライブになると面白くなくなるラッパーたちも沢山いる。

 

 


「面白い」は難しい。

 


だが、「面白い」は楽しいし、

 


当たり前のことだが、

 

 

「面白い」は面白いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


*追記1
「面白い」には、色々な種類がある。
お笑いのようなfunnyな面白さもあれば、
興味深くて好奇心をくすぐられるようなinterestingな面白さもある。
ギャグも面白くて大好きだが、上記の「面白い」は決してギャグの意味だけではないことを、あらためてお伝えしたい。

 


*追記2
上記には、宙チートさんが僕のRAPの師匠だと書いた。それは間違いないのだが、宙チートさん以外にも他にも師匠と呼びうる人たちが何人かいることは追加しておきたい。この人たちについては、また別途ブログに書きたい。あとDef TechのMicroさんの言葉になるが「自分以外師匠」。いい言葉だなと思う。

 


*追記3
上記の通り、他の先輩方が、週1の練習に、来たり来なかったらする状況のなか、宙チートさんは毎週毎週、練習に来てくれた。
ところが宙チートさん、僕の初ライブの日は、大遅刻をかまし、僕のライブを見ていないのだ。師匠に自分のライブを見てもらえなかったのは残念だけど、こんなところも何だか人として愛せるな、と思った。

 


*追記4
宙チートさんは、大粒fightというMCバトルとライブのイベントにレギュラーで出演されている。
ちなみにこの大粒fightというイベント、僕が活動10年目にして初めて優勝したMCバトルである。
初めて優勝したにもかかわらず、なぜかその日だけ宙チートさん、出演しておらず、僕の初優勝の現場を見てただけなかった。
師匠に自分の初優勝を見てもらえなかったのは残念だけど、こんなところも何だか人として愛せるな、と思った。

 


*追記5
宙チートさんもまた、大粒fightで優勝してる。

 


*追記6
宙チートさんに稽古をつけてもらったとき、
僕は下ネタのRAPはほぼしていなかった。
宙チートさんにしばらく会っていないことが数年間あり、今の僕のスタイルを見て、宙チートさんはどう思うだろう、とずっと気になっていた。
そんななか昨年大粒fightで再開したとき、宙チートさんに現在の僕のスタイルをお褒めいただいたことがある。ちなみにこのブログを書いたきっかけも、宙チートさんが昨日Twitterで僕のバトルにふれていてくれたことである。

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*追記7

宙チート氏は現在は、「LIL辰徳」さんいう名前でご活躍されています。僕にとって宙チート氏、いや宙さんは宙さん、なので、あえて上記ではこちらの名前でご紹介させていただきましたが、LIL辰徳さんの楽曲、ライブともに間違いなく「面白い」ので、ぜひチェックしてみてください。